きっと、いつかの物語

現実と妄想をごちゃごちゃに

彼女は何を望んでいたのか

先輩、サクラの事、どう思います? ぼうっと歩いていると後ろから追い付いた後輩に声を掛けられた。私は怪訝な表情を浮かべ、どうって?と聞き返す。こういったものは大抵が陰口を言いたい場合とおちょくりなどで好意的な言葉を聞きたいという2つのパターンであると思っている。彼女は後ろを何度か振り返り声を潜め、どうってあの、ほら、嫌じゃないですか?と聞いた。私はサクラに関して嫌だと思ったことが無かった。確かに価値観は違うがお洒落に気を遣い、甘いものが好きで、自撮りなどをよくする、そんな若い女の子だと思っていただけだった。そしてそんな彼女を可愛いと思っていた。でも違うらしい。聞けば、音楽を聴きながら挨拶をする、チャラチャラしていて何一つ真剣にやろうとしない外見重視の性格が嫌だ、と言うのだった。私は彼女の話に賛同出来なかった。それらを話す彼女の言葉には嫉妬や羨望、劣等感が渦巻いているように思えてならなかった。羨ましかったのだろう、可愛くて沢山の男の子と仲が良くて少しだらしなくしていたところで傷一つ付きやしない彼女が。悔しかったのだろう、自分がどんなに頑張っても手を抜いてる彼女に追いつけない事が。気持ちは分かる。私も昔はそういったものに捉われて心が廃れた時だってあった。だけど、そうやって裏で仲間を作って自分を安定させようとする事が一番自分と彼女を遠ざける理由というのにどうして気付けないのだろう。彼女の話は一見正しい事を言っているように聞こえる。だけどそれは違う。彼女は自分の感情をそれらしい出来事の下に隠してサクラを陥れようとしただけなのだ。こうした事はとても多い。世の中には自分の感情を理論的に組み変えて正しい事を話しているように見える人は沢山いる。そしてそれに賛同する人もとても多い。

結局、サクラはいなくなった。彼女が裏で作ったグループからの嫌がらせに耐えられなかったと聞いた。数日後、彼女が私の所にやって来て一言、こんな筈じゃなかったんです。と言った。私は正直驚いた。なぜなら彼女はサクラに消えて欲しいと思っているのだと感じていたから。私は心の中で語りかける。暴力が一番美しいと言われるのと同じように、負の感情で結び付いた人達はとても強いよ。けれど、そこに齎される効果というのは、ほんの少しのものなんじゃないかな。そして、この結末はあなたが持ってきたものだよ。あなたは何を望んでいたの?と。